2017/08/19 (土) 16:52:23

台東区上野を歩くとこうなる

磯尾ちゃんが声をかけてくれなかったら、上野のタイ展に自ら行くことはなかっただろうな。


平松君と合流して3人で国立博物館へ向かった。
ワンカップの似合いそうな、がに股で歩くおじいさん2人がソフトクリームを食べながら歩いていたのがかわいかった。
博物館の西洋風の建物を見てあれはなんだろうね、いかにも西洋建築が日本に伝わってきたばかり風の建物だ、とか口々に話していたら
前を歩いているおじさんが振り向いて
「あれは大正時代に建てられたものだよ。今は使ってない。」
と笑顔で短く説明してくれた。


タイ展には、仏像や石碑、硬貨などの出土品が展示されていた。
正直来るまでタイの仏像っていうのがよくわからなかったんだけど
現地に行ったことのある磯尾ちゃんが展示前に
「サイケな感じですごく良いんですよ」と言っていて面白そうに思えた。
実際に見てみたら、コミカルな形だったり、可愛い表情だったりして
14〜5世紀のものと思われる
精巧すぎない形のものが好きだった。


見ながら、日本の仏像はどんなだっけか…と比べたくなった。
これまでいろいろ見てきたはずなのにそのときになると思い出せなかった。


法輪という輪っかになっている石を設置するための、土台となる頂板というものがある。
板といっても、厚みがあって箱のような形をしている。
頂板には、設置するための穴があいているはずで、
背の高い平松くんの目からはそれが見えた。
私と磯尾ちゃんの身長では見えない高さに展示されていたから
恥を捨てて思い切りジャンプして見た。
その甲斐あって、穴は見えた。
しばらくして、トントンと優しく肩をつつかれた。
振り向いたら監視員の方だった。
やばい、さっきのジャンプを注意されるのか!しかし監視員の女性は少し微笑んでいた。
「ジャンプしたときに落としたよ。」
私が飛んだ拍子に落とした手持ちのカーディガンを届けてくれた。
怒られなくてよかった。


面白かったのは、貿易のための航海図。
1500年代の航海図には、アジアからその南のオーストラリアまでの地図が描かれていた。
日本(主に琉球)との国交はあったようだけど
まだ日本列島の陸の形は未知だったので、正しい日本地図とは全然違う形で描かれていた。
西日本ぐらいまでしかない…
未知のその地を想像で完成させていて、その端折り方が潔くぶっとんでいて、笑ってしまった。


こんな風に笑っているけれど、私はタイに足を運んだことすらない。
タイの人、食、空気にさらされて観る仏像は、
きっとここで観たものと全く違う印象を受けるに違いない。




このあとはアメ横に繰り出た。
ずっと前から、高架下の熱気溢れるガヤガヤした飲み屋で、ガヤガヤしてみたかったのだ。
つってもガヤガヤしに行ったのは私と平松君のみだった。
求めているのは、店の外に出ている簡単なテーブル席で飲むことだった。
洒落た言い方すると、テラス席。
そういう店はいっぱいあったし、金曜だから賑やかだった。
一軒目で初のアメ横高架下テラス席に座り、生ビールを飲む。
荷物置きは、ビールケース。このワイルドさがすばらしい。
室外機の熱気がすごかった。

もっと、盛んな店に行ってみたくなって移った2軒目はとても良かった。
風通しが良くて過ごしやすい。
ときどきこのテーブル席の真後ろに車やゴミ収集車が通って、客席スレスレなのも異国感がある。
じゃまくせえな、と車にブチ切れる通行人のおじさんすら
「あ〜あこんな風になるのね」と観光客目線で見ることができる。


何より気持ちが良いのは、手際よく客席で働く外国人男性店員さんの、態度。
笑顔なんてものは一切ふりまかない。
私たちが着席する前に、入念にラミネートのメニューだったりテーブルを拭く。
それから、ポケットに突っ込んである袋入りのクシャクシャおしぼりをポイポイと並べる。
持ち運んできた料理を、何も言わずトントンと置く。
会計をすました隣の女性客が去るは「アリガト!」と腹から声を出す。
トイレはどこですか、とお客が尋ねれば、何も言わずその方向へ指をさす。
全く媚を売っていないこの感じが良かった。
そして、よく見たら可愛い顔をしているのである。


ちょっとしたはずみで、隣のテーブルの会社員2人と会話が始まった。
50代後半と、30代半ばの男性。
2人は上司と部下の関係らしいが、部下は上司のことを「ほんとこのオジサンはね、」と酔っぱらった勢いでオジサン呼ばわりしているような仲だった。
部下は、私が着ているTシャツについて突っ込んだ。
「ちょっと話の途中ですいません、これ、さっきから気になってて、なんのTシャツですか?」
「これ、ワイエムオーのTシャツですよ。」
「ワイエムオー?」
「テーテーテーーー、ッテテテテテテテテーーー」
「ん〜…」
「うーんと坂本龍一とかがいる、電子系のグループです。」
部下は上司に尋ねる。
「オジサン、ワイエムオー知ってますか?」
「知ってるよ。イエローマジックオーケストラ。」
「まじっすか。」
「まぁでもオレは、ロックが好きだけどね。」
「ロックというと、何を聞きますか?」と平松君。
「ディープパープル、なんとか、なんとか、ビートルズ…」
「良いですねぇ。」
「ごめん、オレついていけてないっすわ、この話!なんすか、オジサン世代違うじゃないっすか、このお2人と。」
さすがに部下もビートルズの名前ぐらいは知っていると思うが、趣味の違いだと思う。
私はそこまで驚かなかった。
面白いことに、いや、ありがちかもしれないけど、
逆に上司はYouTubeを知らなかった。
「専らレコードだね。音が良いんだ。」と上司。
時代の一回りを思わせたアメ横の一角だった。


部下がトイレかなにかで席をはずしたと思ったら、
「ほらオジサン、レインボーっすよ!」と隣のたい焼き屋で買ってきたレインボー色のかき氷をテーブルにタン!と置いた。急に夏がやってきた。
「おれ、食べないよ。若いのにあげるよ。」
「やったー。」
「ほら、写真撮って!SNS、SNS!」
部下が、スプーンをもらってきてくれた。
YMOは知らないけれど、気前の良い兄ちゃんだった。
下町って面白い。


上司と部下が帰ったあと、空いた席に、あの手際良い店員さんが
パックにつめた白米、おかずっぽいもの、それと某ラーメンチェーン店の箸を置き始めた。
これから何が始まるんだ。
「もしかして、賄いですかね。」
「ここで?」
次の瞬間、店員さんと、顔のよく似たもう一人の店員さんが席についた。
平松君の予想は適中した。
まさか、こんなに混み合っている飲み屋で平然と客席の隣で休憩タイムをとり出すとは思わなかったけど…
やけに美味しそうに見えた。


上野は何度も足を運んだことはあるけども、知らない一面がたくさんあった。
すぐそばを通り過ぎるだけではわからない。
同じ物を見ても、大人になってからわかることがあるし
趣味の範囲から違う方向に踏み出せば、知らなかったことがたくさんある。
日本もアジアだけれど、あの一角すごくアジアだなぁと思った。

 
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