2017/09/10 (日) 02:36:04

あたいの夏休み3 金沢〜京都編

8月27日
カップのスープ春雨にお湯を入れてこれを朝食とする。
今やこれは私の中で、ゲストハウスでとる定番の朝食メニューとなってしまった。
同じキッチンには、なにやらトーストを7〜8枚ぐらいトースターで焼きまくっている女子たちがいた。
私がスープ春雨をすすり終わった頃、
ふと隣を観ると、男女5人ぐらいがひとつのテーブルを囲み
女子たちが焼いたトーストとかをみんなで「すごい高さだな」と重なったそれを囲んでいたのだ。
男女5人数名、夏、ゲストハウス、朝食。
なんて言うと、海にでも行っちゃいそうな大学生のイケイケ夏休み、というイメージがあるが
どうもなんだかそうではない独特の雰囲気が彼らにはあった。

片付けながら思わず、「すごい量ですね。」と突っ込んだ。
そこから会話が始まったが、彼らは宮城県から来たことがわかった。
観光しに来たのかな、と思った。

ちんたらと支度をしていたら、もうチェックアウトの時間を過ぎる頃になってしまった。

「すみません、ちょっと時間すぎちゃって」
「いいですよ。」

スタッフの人が寛容だった。
話の流れから、この土日は金沢市のいたる場所でゴスペルの大会が行われているっつー情報を聞いた。

「ここを利用してた男の子と女の子たち、それに出るみたいなの。」
「ああ!さっきの…宮城から来た人たちですか?」
「そうそう。」

ははぁ。そういうことか。
あの独特の雰囲気はなんだったのだろう。
楽しそうにも見えたけれど、緊張感もあったのだろうか。

「そういえば、自転車お借りしてもよろしいですか?」
「いいですよ。はい、これ鍵ね。」
「500円ですよね。」
「ああもう、いいのいいの!使って使って。」

レンタサイクル500円と書いてあったが、宿泊利用者へのサービスなのかなんなのか、自転車を無料で貸してだすった。
お言葉に甘えて、黒い自転車にまたがって市内を走った。
昨日遊んだ東京組はもういない。
カイロスたちと行動するのも楽しそうだなぁとも考えたけれど、
宿泊先が離れているのもあったし、
昨日喫茶店に一軒も行けていなかったので
自分の心の向く場所へ一人で行ってみたくなった。


IMG_9194_convert_20170918235542.jpg



この市街地の道はすばらしいことに気づく。
歩道、自転車道、車道の線がはっきりとしており、自転車ユーザーには
大変走りやすい道だった。
旅先での自転車はなんて気持ちが良いんだろう!



まず目指したのは、オヨヨ書林という古本屋さんだった。
少しの間、蜂に追い回されたあと、
店に足を踏み入れた。

「すみません、まだ開店してないんですよ。11時からです。」
「あっごめんなさい!」

準備のできていない店に入ってしまった。
隣にくっついている、ひらみぱんというパン屋さんに入ることにした。
パンの持ち帰りもあるのだが、中にカフェスペースもあって、この内装がまた洒落ている。
まさに、インスタ映えしちゃうようなカフェである。
私がパンを眺めていた頃、カフェスペースから次々とお洒落なお客さんが出て来て、
その列でレジが混んでいた。
ようやくレジが空いた頃、トレーにとったカヌレを持ってカフェ利用希望を伝えると、

「すみません、これからランチタイムに入るので10:30がラストオーダーだったんですよ。」

と言われる。
まいったなぁ、と固まると、レジの人は別の人に相談を始めた。

「ランチタイムが11:00からなので、それまででしたら大丈夫ですよ。」

と、特別に席に座らせてもらえることになった。
たいへん、大変ありがたい!!
席の端でカヌレとピーチジュースの時間を過ごした。
会計に向かうと、パンを買いに来た男女が居て、やはり二人とも洒落ていた。
なんだ、土日の金沢というのは、洒落た人ばかりではないか。


IMG_9745_convert_20170918234048.jpg



ようやくオヨヨ書林へ入った。
私が最初の客だった。
さっそく目に入ったのはファッション誌で、90年代の原宿のファッションだった。
奇抜は奇抜でも、やっぱり時代を感じた。

奥に進むと、背の高い棚と、アップライトピアノが置いてあった。
うなるように歌うウッドベースとアコーディオンのBGMが、天井の高い空間の雰囲気をさらに芳しくさせている。
文庫本コーナーには「クラクラ日記 坂口三千代」というのが目に入った。
少し読んでみると、この方は坂口安吾の奥さんだということがわかった。
へぇ〜。

あとから人が入ってきた。
なにやら店の人と、レイアウトの話をしている。
その男性の声がどうも知り合いミュージシャンに似ていて、
ここでたまたま会ったらすごいなぁと思って
バッと顔を上げて見た。
まったく違う人だったが、目が合ってしまった。男性が説明した。

「あ、今夜ここでママミルクっていうアコーディオンとコントラバスのユニットのライブがありまして」
「ああ、いまお店でかかってるのですか。」
「そうなんです。今日19:00からライブなんでよかったら。今設営でバタバタしてて、すみませんね。」
「いえいえ。」

ママミルク…その名前だけ覚えて、世にも便利なスマートホンで調べてみる。
京都のユニットだ。
自分の周りで知ってる人も何人かいることがわかった。
いまの男性の方は、メンバーなのだろうか…
忙しそうな中、ちょっとした隙をぬって尋ねてみた。

「京都の方たちなんですね。」
「そうですね。」
「私も今日、京都へ向かって、あさってライブするんですよ。」
「あー、そしたら入れ違いですねぇ。」

男性は、メンバーではなく
今夜のライブを企画した白鷺美術、の方らしい。
ここでライブとは素敵なものだなぁ。
生音系の人たちの、どこでもライブできちゃうのはときどき羨ましいと思う。
続けて私は、本の背表紙を眺めた。
競走馬の本、ヤカンの写真集、電話機の写真集がすごく気になった。
いつの間にかお客さんが増えていて、そして気がつけばここに居て1時間ぐらい経っていた。
なにも買わなかった。
今からあまり荷物を増やしたくないことを考えると、
あまり容易く手は出せなかった。


初めての金沢に来たならば、喫茶店は行っておきたかった。
昨日のライブ企画者:おおたにさんに教えてもらった喫茶店や、昨日の東京組が行っていた喫茶店も気になった。
おおたにさんが教えてくれた店、ローレンスの看板を見つけた。
明らかに、純喫茶たる純喫茶の字体、デザイン、佇まいだった。
これは間違いなく良い喫茶店…
しかし、3階にあるこのお店、そこへ昇る門に鍵がかけられていて
どうやら今日は営業していないようだった。
看板だけ写真におさめて、階段を降りた。


でもこれはこれで良いかも、と思った。
なんでかというと、ここへ来るまでの道にも、自分がビビっときた喫茶店があり
そこへ潔く足を運べるチャンスが作れたからだった。
人に教えてもらったところではなく、自分が見つけたところへ行く、ということも嬉しかった。


それは、せせらぎ通りという
その名の通り小さな川でみずがせせらいでいる通りに並んでいた
WEST COASTという喫茶店だった。
真っ白な壁、扉に、真っ青な色で店の名前が記してある。
扉を開けて驚いた。
日曜、昼の12時台だというのに客一人おらず、マスターがテーブルに座ってテレビを観ているぐらいの様子だった。
まぁ喫茶店というのはご飯というより、お茶タイムに使うことが多いだろうだから、そういうものかもしれない。
それにしてもちょっと心配になった。

カウンター席に座った。
見渡すと、店の奥には大きなスピーカーが右と左の高い位置に設置されている。
ここは音楽の喫茶か。
そして私が来たからか、マスターが音楽を流し始めた。
Eaglesだった。
もしかしてと思ってEaglesについてスマホで調べてたら、アメリカ西海岸のバンドであることが今更わかった。
そうだよね、やっぱりそうだよね!
それにしても、せっかく大きいスピーカーがあるのにテレビの音はそのままで、
音楽は本当に申し訳程度に
"一応"かかっているくらいだった。
音楽がバックグラウンドミュージックで、テレビの音の方が大きいのが面白かった。

メニューはすごく豊かだった。
コーヒー紅茶はもちろん、サンドイッチ、ビールもあったかな。
サンドイッチは説明書きが書いてあり、それぞれの材料名だけをザッと見ても
「ここ実は結構美味しいんじゃないのかな」という予感がしてきた。
ベーコンとモッツァレラチーズとレタスとキュウリが挟んであるサンドを注文した。
マスターは作り始める。

「お店の写真撮ってもいいですか。」
「いいですよ。」

愛想がとびきり良いというわけでもない答え方。
この店への愛情はマスターの様子からは伺えないのだが、
かけている音楽や、棚のレコードの数、張ってるポストカード、置いてある雑貨を見ると
西海岸への愛情で溢れているのだ。
語りはしないマスターだが、自分の居る空間を最大限心地の良い場所に仕上げているところが愛おしいと思った。

ベーコンサンドが出て来た。
厚みがあって、しっかりと食べやすくサンドされてる。
何より、美味しい…
なんだ、最高じゃないすか、びびらせないでくださいよ、とサンドイッチを頬張りながらマスターを見ると
料理を出して安心しきったマスターはもうテーブル席についてテレビを眺めていた。
マスター…笑

ボーナストラックだろうか。Eaglesのライブ音源が流れたが
スタジオでレコーディングされたみたいに音が良いし、上手かった。
音量もちょっと上がって
Eaglesを一周したあとは、ボブディランが流れた。

正直なにを食べたら良いかわからない気分になっていたけれど
サンドイッチはめちゃくちゃ美味しくてペロっと最後まで食べた。
最後にマスターに、お店のマッチはありますかと聞くと
「ないです。」と歴然とした様子で答えた。
ないよなぁ。
でも良い店だったなぁ。
店を出るときに、入り口近くにスタッフ用扉みたいなのがあるのを見つけた。
そこには「CAPTAIN」と書いてあった。
マスター…!!!


IMG_9233_convert_20170918235501.jpg


IMG_9791_convert_20170918233948.jpg


IMG_9777_convert_20170918234021.jpg



せせらぎ通りをつきぬけて大通りに出た。
大きなビルの下で、何やら人が集まっており、マイクやスピーカーなどの音響機材が整ったところで
アカペラのグループが歌っているのが見えた。
これはもしかして。
ゴスペルの大会のポスターが張ってあった。
これが、ゲストハウスで居合わせた宮城の若者たちが参加している大会か。
ここで会えたら、面白いなぁ。
彼らの顔はよく覚えていないけれど、独特の雰囲気があったから居れば見つけられそうな気がした。
そう思って探したけれど、見つけられなかった。


結局わたしは兼六園だとかお城の跡だとか21世紀美術館だとか、あと昨日教えてもらったラリーレーベルとかには一切寄らず
今回の金沢を去ることとなった。
混んでいる場所もあまり好きではないので、後悔はなかったし、充分だった。
また次に行く楽しみになるから良いな。


このあと、私は京都へ向かう。
ありがたいことに、京都や滋賀へ帰るカイロスカーに、乗せてもらうことになった。

「21美、行きました? 私、結局行かなかったんです。」
「あーもう、行かん方がええ。人がいっぱいおった。」
「じゃあよかった!」

出発して間もない頃に、ハードオフに立ち寄った。
これはカイロス、いや、リーダーの乙川さんの趣味・習慣で
ことあるごとに至る場所で立ち寄るらしく
金沢に来てもエフェクターや楽器、ジャンク品などの物色が始まっていた。

車窓からは、日本海をちょっとだけ覗くことができた。
太陽は東から西へ動くことは知っていたけれど、まさか日本海に沈むなんて、知らなかった。


お土産を買うために、大きいサービスエリアへ寄ろうということで
乙川さん調べによる徳光PAに停まった。
私が今まで降り立ったPASAの中で、一番大きかった。
笑っちゃうほど広大で、それにしてはお客さんの数が広さに伴っていなくて、閑散としたローカル感が良かったな。
お魚コーナーを歩けば、
それぞれの店の人が試食をじゃんじゃんくれて
叩き売りのような口調で購入を促してきた。市場じゃないか。
2階にのぼると、名前入りキーホルダーなど懐かしいお土産品が並んでおり
振り返ると窓の向こうに水平線が見えた。


IMG_9257_convert_20170918235432.jpg



チルコ(滋賀)、大阪チームとは途中のSAで別れた。
このあと京都へ近づいたときだろうか、十何キロの渋滞が発生して、亀のような車の進み具合となってしまった。

「まいったな〜。こういうときは…」
「言葉あそび。」
「しりとりとか。」
「せやな、記憶しりとりとか。」
「わ〜、絶対無理!頭使うやつだ自信ない!」
「いや、これがね、意外といけるよ!」
「いやいやいや…」
「じゃあ一周だけする!?一周。」
「わかった。りんご。」
「坂田くん言ったから、クララ。」
「りんご…ごま。」
「りんご、ごま、まめ。」

ハイウェイで、大人のシビアな記憶しりとりが始まった。
自信がない発言をしたのは私で、乗り気だったのはFujiさんだった。
楽しい車移動から一転、
いつ自分が踏み外すかわからない緊張や気持ちのこわばりを感じる時間となった。
しかし、Fujiさんの言う通り、意外と記憶しりとりは続くもので、何周もして、いくつもの単語を並べることができた。
そして一番乗り気だったFujiさんが、
一番最初に撃沈した。


あまりにも心臓に悪いため、第二ラウンドはテーマを食べ物に絞ったスタンダードしりとりになった。
みんなリラックスしていた。
だんだん、普通に単語を言うのもつまらなくなってきて

「市場でいろいろ食べて来たけど、なんだかんだこれが美味しかった…イカ」

など、これから出すワードにまつわるエピソードを交えて単語を発表するようになった。
すると、なにか面白い話にならないかと
また頭を使うようになった。
そうこうしているうちに下道でぐんぐんと京都市内へ入っていった。
いつも私は東から京都に来ていたけれど、上の方から入っていくのは初めてで新鮮だった。


そして、私が今晩から泊まる場所は、
カイロスメンバーが暮らすシェアハウス、『カイロスハウス』だった。
クララズによる、Kailiosへのスパイ行動が始まった。


→あたいの夏休み4 京都編

 
Trackback(-) comment (0) | 旅行記・散歩記
comment
URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 
クララズによる自由研究、日誌