2018/09/01 (土) 19:20:55

夏を終わらせないツアー 神戸・大阪編

8月22日


なくしたと思っていた1塁アルプス入場券が、整理していた保冷バッグから出てきた。
嬉しかった。





阪急電車に揺られ、乗り継いで約一時間。
神戸の高速長田に着いた。
地下鉄の出口は、浜手方面と山手方面の2つで、その名の通り海側と山側を意味していた。
山手方面に出ると大きな鳥居がそびえており、そこから商店街が続いている。
歩き続ければ神社に突き当たるはずだが、あまりの暑さに耐えきれず、来た道を引き返した。



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駅より浜手方面に、喫茶店「ぱるふあん」がある。
ずっと行きたいと思っていた場所。
通りから「ぱるふあん」という看板が突き出しているのを見つけて、立ちどまって写真を撮る。心の準備をした。
その先へ行くと、丸い扉があった。
ついに来たなぁ、と扉を開けた。


月みたいな色した照明も丸く、お店の中も筒のように丸く、鏡も丸い。その脇にある2つのスピーカーから音楽が流れている。宇宙船の中に入ったみたい!
テーブルの上に、どうぞとばかりにマッチが置いてある…すばらしい。
マッチもお店の形をイメージしたイラストだった。



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カルピス注文。

「お店の写真、撮ってもいいですか?」
「今だったらいいですよ。誰もいないから。」

私以外のお客さんはまだ誰も居なかった。
奥に居る従業員2人に聞こえぬよう内緒話しているかのように、許可を得た。
円にひたすら統一された、シンプルだけれどほかに見ない特殊な空間。
これはみんな、撮りたくなってしまうがな…


ときおり扉の向こうで通過する白いトラックが、夏の太陽から反射した光を、お店の中に一瞬投げ込む。
かなり落ち着いた照明の店内がピカッと白くなる瞬間は、この店ならではの現象。


40年以上前に建てられたというこの喫茶店。
従業員の方は3人とも年配で、そのうちの一人に
「ずっと行きたくて、東京から来たんですけど。すごくカッコいいです」と伝える。

「遠方からのお客さんも多くいらっしゃいます。まぁ〜レトロだからね。」

古いものが一周して若い人には興味深く見えるのだろう、といった意味でそう言ったのかもしれないが
これはどこの時代に回っても、どの点から見ても
同じ魅力を感じることができるかもしれない。
そして、ここまで斬新でありながら、喫茶店として落ち着ける空間になっているのは、素晴らしいことだと思う。



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さらに私は西を目指した。
海に行きたかった。
須磨海水浴場へ行けば、砂浜で海を眺めることができるかもしれない。
景色は徐々に、山が多くなり、反対側に海も見えてきた。


須磨浦公園に来た。
ホームに降りると、夏!ローカル!遠くに来ちゃったな!の感じが出てきた。ロープウェイが駅に降りてくるところが見える。
改札を出ると、さらに呑気な雰囲気だった。
海の方向に歩く。
鎌倉高校前みたいに、車の通り沿いに電車が走っていて、その先が海。
とても高い気温と、強く照りつける太陽。
数十メートルを歩くのも億劫だった。



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海岸に辿り着いた。
貝殻、わかめ、石ころが拾い放題の砂浜。
思ったより視界は狭く、打ち寄せる波は荒々しい。
階段の側面には、誰かが傷ついてしまうような落書きが残っていた。



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途中から気づいたのだが、
須磨海水浴場はここより手前の駅で、どうやら少しだけ西に行き過ぎたようだ。
降りる駅を間違えたけど、海は見える。
あまりの暑さに、浜辺でボーッとなんて、苦行になることしか予想できなかった。違う意味のボーッとになってしまう。駅に戻った。
ロープウェイに昇ることすら迷うやる気の出なさ。
街に戻っても良いような気がして、改札に入った。


滞在時間は20分にも満たなかった。
まぁこんな旅もあるし、危険な暑さだし、行ったことない地に足を踏み入れることに価値はある!と自分の決断を正当化した。
大阪方面ホームへの階段を登っていると、
白くペタッとへばりついている何かが見えた。
そいつを覗き込むと、見覚えのある形をしていた。

…オオミズアオ。

!!!!!!
ずっと私が肉眼で見てみたいと憧れていた美しい蛾だった。
しかしせっかくの初対面というのに、もしかして死んでいるんではないだろうか…
よく観察すると、少しだけ動いていた。生きている!
暑さでへばっているのかもしれない。
手を差し伸べると、前足2本をちょこちょこと指に乗せて来た。かわいい…
そこで、本数の少ない大阪方面の電車が来た音がした。
私は、それに乗ることに急いだ。
一瞬の触れ合いだったけど、触れた感触は梅田に着いたあともしばらく忘れなかった。
目的地を間違えて良かったと思った。




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色々なことに夢中になるあまり、14時の時点でまだお昼ご飯を食べてなかった。
西宮出身で大阪に詳しいクララズのドラム:ODCに、梅田おすすめランチを教えてもらうべく連絡した。
占いの結果、2つの店を教えてもらう。
1つは残念ながら閉店。


もうひとつの店が、私を中崎町の高架下へ導いた。
周りの店が臨時休業や改装でシャッターをおろしている中、心配になってきたが、その店だけは生きていた。
だだっぴろい店内にオフィスレディをはじめたくさんの女性客が席を埋めていた。
パスタを一品頼めば、
ドリンク・スープ・パンが食べ放題。ビュッフェと呼ぶべきかしら。
空腹の私には素晴らしいシステムだった。
店員さんの対応が塩で、まぁそんなもんだよなと店を出る。





ODC、今度はカフェを占う。
いかにも私が好みそうな喫茶店から、汎用性の高そうなカフェまで教えてくれた。
歩いて一番近くにある、「太陽ノ塔」へ行った。
ここがとても素晴らしかった。


まず店員さんの感じが非常に良い。
先ほどの塩を浴びてからでは、この程よく人として認識してくれる温かみが、例えるなら三温糖のようだった。
「お好きな席」へ座ると冷房直撃で、長く居られなそうだと予想した。
しかし私は、寒さに抗うための温かいタンポポコーヒーではなく、せっかくだから金魚のゼリーが浮いたソーダが飲みたい…


「ゼリーソーダお願いします。氷、少なめでお願いできますか。」
「はい、少なくすると金魚が沈みがちになっちゃうんですけど、」
「大丈夫です。御手洗、どちらですか…?」
「2階に上がって右です。」


2階に上がると、ここにも客席があり、
男女が一組だけテーブル席でおしゃべりしている。
そして、広い座敷席があった。冷房もきつくなさそうだ。
お花を摘んでから1階の席に戻ると、完成したゼリーソーダが置かれていた。
店員さんに、2階に移れないものか交渉した。


要望の多い面倒な客である自覚はあったが、
それでも店員さんの対応の良さは変わらなかった。
誰も居ない座敷席。一人で長い時間をすごす場所を確保できた。
ソーダが美味しい室温で、金魚を掬って味わった。




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気にかかっていたのは、スマホの充電だった。
モバイルバッテリーも充電がなく、
これから友達と会うために連絡は必要だし、
23時の夜行バスまでバッテリーが持ちそうになかったからだ。
そこで目の前に、扇風機の繋がったコンセントの差し口が見えた。
誰も来なそうだから、お電気頂戴しようかしら…
1つ空いているコンセントの差し口を覗き込むと、
なんと「ご自由にお使いください」というシールが張ってあった。
すばらしい。頂戴します。有難うございます。


店内に、おざけん、フリッパーズギターなど流れた。
そして90年代っぽいマイラバ的サウンドでちょっと懐メロくるのかと思ったらカネコアヤノで、冴えてきた。
はっぴいえんど、スーパーカー、
座敷席にお洒落な女の子3人が着席。


一人が、席から離れたところへグラスを持って、みんなの水のお代わりを注ぎに行く。
仲間から見えないところで、「ストップゆってー」と言いながら注いでいる。
なんて無茶なんだ。

「この青い壁、かわいいー。」
「あたしの部屋、こんな壁の色してる。」
「家!?」
「うん。」
「…どんな反応したらいい?」

中崎町に来る女の子は面白いと思った。





カフェを出て、
NU茶屋町へ行った。タワレコや、ファッション・雑貨の店が入った商業ビルである。
エレベーターに乗ると、私が目指すタワレコ6階のボタンは既に押されており、
複数人乗ったほかの誰かもタワレコ降りるんだなぁ〜と思ったら、
エレベーターに乗ったみんながタワレコに降りた。
感心してしまう光景だった。





梅田の地下街の中にステーショナリーの店があり、マスキングテープの売り場に引っ掛かった。
妹にお土産を買いたくなった。
たい焼き柄サンプルが一番魅力的に見えたが、在庫がなかった。
ダメ元で店員さんにきいてみた。

「たい焼きって、もうここにない限りないですか?」
「そうですねぇ〜、たい焼きはもう廃盤になっていて入荷の目処が立ってないんですよ〜」

本当に、たい焼きだけが、きれいに空っぽだったのだ。





心斎橋で、はづきんと待ち合わせた。
行く場所はすべてお任せし、
たこ焼き→寿司屋という、B級グルメからA級グルメへのコースを考案してくれた。


アメ村の近くにある「味穂」というたこ焼き屋に入店。
私は、大阪に何度か行っているのにたこ焼きを食べたことがなかった。
屋台のような小さな店構えを想像していたが、
ここは居酒屋のように、数多くの椅子とテーブルが配置されている。

味穂のたこ焼きは、ソースやかつおぶしが乗っているんでなく、
出汁につけて食べるスタイルだった。
親しみやすい味を感じながら、私はいま大阪に来ているのだなと思った。



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夜に輝く大丸やDiorのビルは2010年代の真新しい光を放っていて
大阪もなかなかにきれいだと思った。
はづきん曰く、大丸ビルは去年建て替えが行われ、
それまでは大正モダンの古き建築の魅力を残していたという。

「それは、惜しむ人たちが多かったろうね。」
「はい、惜しみました。」

あとから調べると改装前は、詳しく知らないがよく耳にするヴォーリズ建築だったことがわかった。
大正時代に建てられ、焼失はあったものの
現在は、近畿で最古の百貨店として残っている。
今更言っても仕方なさすぎだが、遺産級の建築だったのではないか…



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▲ モータープールって関西では駐車場のことを呼ぶらしい。



鰻谷通りに入り、私の中では「鰻バター」で有名な寿司店、「じねん」に入った。
去年、連れていってもらってから
定期的に「じねん行きたいなぁ。じねんが近くにあったらなぁ」という思いのさざ波が来るときがあった。
そのじねんとは別店舗だけれど、
美味しさと店の人のユニークさは変わらなかった。


この店では会計時に、子どもに配るようなおもちゃをもらえる。
おもちゃカゴを持って来た比較的若い店員さんが
カゴの中の柔らかいボールをブニブニ触ったり、光らせたりしていた。
年齢が二回りも上ぐらいのおじさん店員が

「触んなや。もうオッサンなんやからもう。だから触んなや〜 俺のや!」

と、若い店員さんの遊びを阻止する。
ちょうど、若い店員さんがブニブニしていたボールが見たことのないもので非常に面白く、それを妹(25歳)へのお土産にすることにした。





お祭りの帰り道みたいに
はづきんは光るボールをヨーヨーのように操り、
私はボールを袋ごしにブニブニ触りながら、
御堂筋の大きな信号を待った。
路上に、ばらの花屋もあった。一本400円。
表参道みたいなきれいな通りだけど、人間くさいところもちゃんとある。





はづきんは、「クララさんを是非連れて行きたい」と次の場所へ導いた。
一応グリコの前でベタに撮影をし、道頓堀を越える。
くいだおれ人形が居るあたりの通りは
夜は新宿歌舞伎町のように明るく、観光客が陽気に歩いていた。


千日前のアーケードが見えた。

「千日前ってなんてよむの?せんじつまえ?せんにちまえ?」
「せんにちまえです。」

2020年に行われるオリンピック開催のちょうど1000日前、
"千日前"という大きな看板のところに、「オリンピックまで」の字が掲げられたらしい。





やがて、目指している「味園ビル」の大きな看板が見えた。
LEDではない、赤と青の丸い光が私たちを呼んでいる。
昔はキャバレーだった「ユニバース」を併設しているビッグ商業施設だが、味園ユニバースは現在もホールとして活躍している。
噴水が稼働しているエントランスが、バブルや宮殿のムードだった。
スロープで上の階に着くと、たくさんのバー・スナックが並んでいた。
堂々とアングラな雰囲気が漂っており、お店のひとつひとつがコンパクトで、新宿ゴールデン街のようだった。

時間があれば、店に入りたかった。
今回は見学だけで、次は店に入る、という宿題や目標ができた。
実は以前から味園ビルは気になってはいたのだが
はづきんはそれを知らず「好きそうだ」と連れて行ってくれたのは嬉しかった。
なんにしても、これから夜行バスに乗ってオラ東京さ帰るので…



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はづきんは停留所まで送ってくれた。
どうやら明日の夜、台風が来るらしい。
その前夜だからか、喧噪から離れた寂しげななんばパークスの麓では強い風が吹いており、お互いに髪を乱しながら手を振った。
兵庫よ、大阪よ。
楽しく安全に夏を楽しませてくれてありがとう。


 
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